冬ランでペースが落ちる理由と、寒さに負けない走り方の科学

気温が下がる12〜2月、
「同じ effort(体感強度)で走っているのに、なぜかペースが落ちる…」
と感じるランナーは多いはず。
実はこれ、単なる“気のせい”ではありません。
冬の環境は、呼吸・筋肉・循環・エネルギー産生の全てに影響します。
本記事では、「冬ランでペースが落ちる科学的理由」 と
「寒さに打ち勝つための実践的トレーニング法」 をわかりやすくまとめました。
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- runstagramer 編集長 / 三好拓也
- 20年以上ランニングを楽しむ市民ランナー
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Contents|目次
1. 冬になるとペースが落ちる“科学的理由”
① 体温維持にエネルギーを奪われる
外気温が低いほど、身体は“熱を生み出す”ために余計なエネルギーを使います。
その結果、ランニングに使えるエネルギーが減り、パフォーマンスが落ちます。
研究データ:
気温10℃以下では、運動時の代謝が10〜20%上昇する(体温維持のため)。
→ つまり同じペースを維持しようとしても、余計に疲れやすい。
② 空気が乾燥し、呼吸がしづらくなる
冬は湿度が低く、気道(喉・鼻)が刺激されやすくなります。
特にランナーは大量の空気を吸い込むため、
・喉が冷える → 血流が低下
・気管支が収縮 → 酸素取り込みが低下
という流れでVO₂max(最大酸素摂取量)が下がります。
体感としては
「息が吸いにくい」「心拍が上がりやすい」
と感じる原因がこれです。
③ 冷えた筋肉は“伸び縮み”の効率が悪い
筋肉は温度が高いほどパワーが出やすい性質があります。
しかし冬は筋温が上がりづらく…
・ストライドが伸びない
・地面反発のロスが大きい
・ケガリスクが上がる(特に太もも裏・ふくらはぎ)
この3つが重なるため、自然と「遅く・短く」走る動きになります。
④ 風が“ランニングの空気抵抗”を大幅に増やす
冬は北風の強い日が多く、特にペース走では影響が大きいです。
風速1m/sでペースは約3秒/km悪化
風速5m/sなら約15秒/kmのロス
つまり、
向かい風ならどれだけ頑張ってもペースが落ちるのは当然。
⑤ 手足の末端が冷えてフォームが崩れる
冬にありがちな“末端冷え”は、実はフォームに影響します。
・手が冷えて腕振りが小さくなる
・足の感覚が鈍くなって地面反発を使えない
・着地の安定が失われる
→ 結果、上下動が増え、ストライドも縮む
→ さらに消費エネルギーが増えてペースが落ちる
2. 冬ランでパフォーマンスを維持するための科学的アプローチ
① ウォームアップに「10〜15分のジョグ+ドリル」を入れる
寒い日は特にウォームアップが命。
おすすめセット
・ゆっくりジョグ 8分
・レッグスイング(前後・左右)
・スキップ
・流し(30〜50m × 2本)
筋温が1℃上がるだけでパワーは大きく向上します。
② 手足を守る「末端防寒」を徹底する
ペースが落ちる最大要因が“末端冷え”。
最低限の必須アイテム
・ランニング手袋(防風タイプ)
・イヤーウォーマー
・アームカバー or ネックゲイター
末端が温まるだけで“腕振りの大きさ”が戻り、
呼吸も安定して全体のフォームが整います。
③ 心拍ゾーンで走る(ペースにこだわらない)
冬はペース(km/分)ではなく、心拍数を基準に調整すると安定します。
例:
・ゾーン2=ジョグ
・ゾーン3=テンポ走
・ゾーン4=閾値走
“外気温の影響を排除”できるため、質が落ちません。
④ 室内トレ(トレッドミル)を適度に取り入れる
完全に外でやろうとすると、疲労が溜まりケガリスクも上がります。
おすすめの使い方:
・ペース走は室内
・ジョグは外で気持ちよく
・インターバルは室内またはウインドなしのコース
特に「閾値走(Tペース)」は冬の外ランでは質が落ちやすいので室内が◎。
⑤ 呼吸がつらい人は“鼻呼吸スタート→口呼吸ミックス”
寒さで喉が痛い人は、いきなり口呼吸だと気道が刺激されて咳や違和感が出やすい。
おすすめ
前半:鼻呼吸メイン
中盤〜:鼻+口のミックス
鼻で温度と湿度を整える効果があり呼吸が楽になります。
⑥ 冷えすぎる日(気温0〜5℃)は「上り基調のコース」へ
平地 × 強い向かい風 は最悪の組み合わせ。
でも、緩い上り坂なら空気抵抗の影響が小さく、体温も上がりやすい。
→ 冬こそ坂を味方にするとペース維持がしやすい。
3. 冬こそ“伸びる”ランナーが多い理由
一方で…実は冬はトレーニングの質を高めやすい季節でもあります。
・夏より心拍が安定しやすい
・走行距離を伸ばしやすい
・脂肪燃焼効率が高い(基礎代謝UP)
・春のレースに向けてベース作りに最適
つまり“冬はペースが落ちるけど、強くなる季節”。
ペースが遅く感じても、それは身体の自然な反応なので気にしすぎなくてOK。
4. まとめ|冬のペース低下は「仕方ない」でも“工夫で変わる”
冬ランでペースが落ちる理由(科学)
・体温維持でエネルギー消費が増える
・呼吸がしづらい
・筋温が上がりづらい
・風の抵抗
・フォーム崩れ(末端冷え)
対策(科学×実践)
・ウォームアップを徹底
・末端防寒
・心拍基準で走る
・トレッドミルでの補完
・鼻呼吸の活用
・坂コースを選ぶ
冬ランは過酷ですが、乗り越えるほど春のレースで“急に速くなる”ランナーは本当に多いです。
寒さにうまく適応して、12月〜2月の走りを味方にしましょう。











